行政システム株式会社

Topics vol.21 私がSEからコンサルタントになった訳

 この3月で2025年度が終わる。社会に出てちょうど45年が経つと思うと感慨深いものがある。これまでのキャリアはSE15年、コンサルタント15年、研究者15年と15年ごとに職種を変えてきた。別に計画的に転向したわけではなく、時代の流れとともに変わったのが実情だ。昔話など無用という向きもあろうが、今回ばかりはご容赦を。

 大卒でコンピュータ会社に就職したのが1981年。就職難の時代で、就活で文学部出身だと名乗っただけで採用面接は断られた。「ここなら誰でも採ってくれます」と大学の就職課に紹介されたのが富士通とNEC。文系の学生にとって聞いたことも無い会社だった。

 当時プログラマが不足するという危機感から、コンピュータ業界は手当たり次第に大卒を大量採用していた。特にこの2社は毎日残業・徹夜続きで殺されるという噂まであった。今で言うブラック企業だが、当時のマシン性能は低く、コンピュータに仕事をさせていた時間が長かったのだ。

 この時代の電機業界の序列(かなり主観的だが)から言えば、筆頭は日立と東芝、次がソニーと松下(パナソニック)、さらに三菱電機、シャープ、サンヨーと続き、コンピュータ業界はその下だった。つまり、コンピュータ会社はよほど成績の悪い学生か変わり者ばかりの集まりだったのだ。

 富士通とNECどちらでも良かったのだが、あえて国産技術で経営が不安定とされた富士通を選んだ。NECは家電部門があることで、経営的に安定しているという評価だった。どちらにせよ最先端技術を学ぶことが目的で、定年まで勤めるとは思っていなかった。残業は多かったが、給料をもらいながら勉強できるので別に苦にもならなかった。

 若い頃、なぜ大学で考古学を学びながらコンピュータ業界へ入ったのかと聞かれることが多かった。しかし、私自身違和感はなかった。考古学は文化に関する学問だと思われているが、実際に社会を変えるのは技術であり、技術による社会変容に関心があったからだ。技術が社会をどのように変えるのか、リアルタイムで見るにはこの業界がうってつけだった。

 配属されたのは公共部門で、自治体のシステム開発に携わることになった。要望に応えて機能を実現し、顧客から感謝されることで最初のうちは満足していた。相手が不条理な人間でなく、合理的な機械だったことも自分の性に合っていたと思う。しかし、仕事に慣れていくうち、徐々に疑問が膨らんでいった。顧客が不合理な要望をしてくることに気づいたのだ。

 顧客もそれは理解していて、法律がコンピュータ処理に適合していないからそうせざるを得ないという。それなら法律を改正すれば良いではないかと思うが、公務員の立場からそれはできないという。確かに近代法以降、法の建付け上権力側で法律を勝手に変えるわけにはいかない。かといって立法府の連中はコンピュータを避けるように距離を置いていた。

 当時はBPRやDXという言葉も無く、ましてITで政治家になるなど論外、自分の主張を広め賛同者を集めて変革の風潮を作るしかなかった。技術普及のため法改正の論陣を張るには、現場のデータや事例を多く集める必要がある。それにはコンサルタントになるのが一番手っ取り早いと考えたのだ。幸い自治体は民間企業と違って企業秘密というものは無く、どの自治体もデータや事例を快く使わせてくれた。

 コンサルタントになって5年目の2000年に『自治体のIT革命』を出版した。そこではパソコンとインターネットの普及で大きく社会が変わり、自治体もITを活用して改革(BPR)すべきと主張した。地方分権という時代の流れも後押しし、BPR推進の法的根拠として同年施行された地方分権一括法を位置づけ、さらに現行の法制度の問題点を訴えた。

 その後2003年、住基ネット反対運動で四面楚歌の中、『住基ネットで何が変わるのか』という住基ネット必要論を出版する。富士通総研ではコンサルタントにも研究予算が配分されていたため、このような活動が可能だった。以降、単著を10冊、共著も含めれば30冊くらい出版しただろうか。

 2010年に富士通総研内の経済研究所に異動して研究員となるが、番号制度の気運が高まり、それに専念することになったからだ。マイナンバー制度が開始されて10年、何とか稼働しているものの、その設計の危うさには今もハラハラしている。その危うさのために問題がポロポロと起き(先日も原因不明の事象が自分の身に起きた)、いまだに仕事を続けられるとは皮肉なものだと思う。

 世の中は新たな技術によってさらに変わりつつある。第2次AIブームでは亜流だったニューラルネットワークがDL(Deep Learning)に進化して画像認識で脚光を浴び、それが自然言語処理へと適用されてLLM(Large Language Model)へ進化。さらにVLM(Vision Language Model)からVLA(Vision Language Action Model)へとAIはフィジカルな分野にも進出し始めた。

 AI技術の発展により社会がどのように変化していくのか、リアルタイムで観察できるのはとても興味深い。行きつく先は楽園か、それともディストピアか、そしてシンギュラリティは何をもたらすのか。最近の就活生はコンサルタント志望が多いらしい。彼らは何を目的に、どのようなことに関心を持って志望しているのだろうか。

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