行政システム株式会社

Topics vol.19 税・社会保障と行政の仕組み ― 高等教育で必須科目に

 行政の仕組みとは、大雑把に捉えると税と社会保障から成り立っている。言い換えれば、皆が必要とするものを実現するために税を、困った時の相互扶助のために社会保険料を、住民から応能負担・応益負担の原則で徴収するのが行政だ。この仕組みは日本で生活する以上、誰も免れられない。

 しかし、その仕組みについてきちんと教育を受けたことがあるだろうか。実際に所得税・住民税を納め、医療保険料・年金保険料・雇用保険料を払うのは社会人になってからであり、その直前の大学や高校で教育すべきだろう。しかし、筆者を含め周囲に確認しても、そのような記憶が無い。また、会社から説明を受けた記憶も無い。

 つまり、社会人になって給与明細を見てはじめて、知らないうちに税金や社会保険料が天引きされていることに気づく。しかも、所得税と住民税は課税方式が異なる。所得税は現年課税でその年の所得に課税されるが、住民税は前年課税で前年の所得に課税される。何も知らない新卒社員にとっては、2年目になったら税金が増えていたということになる。

 あたかも社会全体で、新社会人に気づかれないよう税や社会保険料の負担をさせようとしているのかと疑いたくもなる。税や社会保険料の負担もさることながら、税・社会保障に関する法制度や仕組みに関する知識が無いと、当然ながら行政・政治に対する関心も薄れ、選挙における投票という行動にも結び付かない。

 2025年7月の参院選では、与党への批判票が既成野党ではなく新興政党に流れたが、SNSでの情報拡散や過激な言動などで若者世代の支持を集めたことが要因だと言われている。しかし、行政システム総研研究レポートNo.02[1]で分析したように、若者世代の投票率は他の世代よりもかなり低く、実数も10%程度の影響力しか無い。

 若者世代の投票率が低いことはどの回の選挙を見ても明らかとなっている。しかし、若者も社会経験を積むに従い政治に対する関心が高まり、年齢とともに投票率が高まるライフサイクル効果があるから深刻に捉えるべきではないという考え方もある。

 ところが研究レポートで世代別投票率のグラフを作成したが、緩いライフサイクル効果が認められつつも、世代が下るごとに世代全体の投票率が下がっているという傾向が明らかになった。レポートでは、自治体レベルでインターネット投票を活用した参加型予算編成などを行い、若者世代に身近な施策決定への参加を促し、投票行為とその結果についての実体験をさせるべきと提案した。

 ただし、その前提条件として、税や社会保障に関する基礎的な教育を大学や高校など高等教育機関で実施すべきではないだろうか。筆者は地方議員を対象としたセミナーで、自治体が保有する住民情報の管理と税・社会保障の仕組み、およびそれを支える情報システムなどについて講義しているが、議員でさえ基本的な知識を持っていない。これは本人の問題ではなく社会全体の問題であり、早急に取り組むべきではないだろか。


[1] 行政システム総研 研究レポートNo.2https://www.gyosei-system.co.jp/topics/15877

トピックス一覧へ戻る