行政システム総研の研究レポートNo.2「国政選挙における若者の投票行動と世代間における投票意識の差について-2025年参議院選と国政選挙における投票率に関するデータ分析-」(執筆者:榎並利博)を公開しました。
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-要旨-
2025年7月に実施された第27回参議院選挙では、与野党ともに既成政党への票が伸びず、与党は過半数割れに追い込まれた。この選挙結果において、与党への批判票が既成の野党に流れたのではなく、新興政党に集まったことが特徴的である。
その理由として、SNSなどのデジタルメディアが多用され、またポピュリズム的な過激な言動も広く流布したため、これまで政治に関心のなかった(選挙に行かなかった)若年層が投票に参加したからではないかと言われている。
総務省の年齢別投票者数調のデータを使ってその事実を確認するとともに、10代・20代の若い世代の政治に対する関心にどのような変化があったのか、世代間の投票行動がどのように変化してきたのかに着目して投票率のデータを使って分析し、今後の選挙あるいは有権者教育に資する提案を行った。
第27回参議院選挙において、10代・20代の若年世代投票率は前回に比べて大きく上昇した。しかし、それ以外の世代も前回に比較して上昇しており、ほぼ全年代層において政治に無関心であった層が投票に参加したことがわかる。また、投票者の絶対数を見ると、10代と20代の投票者数は他の世代よりもボリュームが小さく、合わせて10%程度にしかならない。
つまり、与野党問わず既成政党に期待が持てず、新興政党に投票する行動を取ったのは若者世代だけでなく、全世代に共通する現象であったといえる。つまり、これまで政治に無関心であった層が、新興政党であれば自分たちの不満を受けとめてくれるという感触を持ったことが理由だと考えられる。
次に投票率から世代別のグラフを作成してみると、各世代は年齢を重ねるごとに投票率がやや右肩上がりになるライフサイクル効果が見られる。しかし、それ以上に特徴的なことは、各世代のグラフが綺麗な層になっており、世代が下るにつれて順番に下の層へと移動していることである。つまり、各世代を比較してみると、世代が下るにつれてその世代は前の世代よりも政治への関心が薄れる傾向がある。これは衆議院選挙のデータを使っても同様の結果となり、将来の国政における民主主義にとって忌々しき事態と言うべきではないか。
これに対する施策として、全世界100都市以上で採用されている参加型予算編成(Participatory Budgeting)という自治体レベルの取組みを提案したい。マイナンバーカードを使ったインターネット投票によって投票結果が投票者の身近な施策に関する予算に反映されれば、民主主義の根幹を成す選挙の意義とその良し悪しを実体験できるはずだ。
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